パイプ加工:パイプ曲げ加工に求められるもの
本記事では、パイプ曲げ加工に求められるものについてご紹介しています。ぜひご覧ください。

前回の技術コラムでは、「材料の展開寸法の求め方と端末加工」について解説させていただきました。
本編では「パイプ曲げ加工に求められるもの」について解説させていただきます。
まだ、「材料の展開寸法の求め方と端末加工」について、ご覧になっていない方は下記リンクよりご確認ください。
流体を移送する目的で作られるパイプ部品は、使用する環境で設計内容も異なります。例えば工場プラントなどの場合にはスペースの制約が比較的緩い為、パイプ部品の管径が決まれば、直管とL型継手(エルボ)やT型継手(チーズ)を用い、フランジで接続する事で対応できます。一方、建設機械、農業機械などに搭載される産業用ディーゼルエンジン等は、搭載スペースをコンパクトにするため、部品間の距離を詰めた設計をされ、各部品間を接続するパイプ部品の設計も複雑な3次元形状となっています。この3次元形状のパイプ部品を高精度に曲げることがお客様から望まれています。
板材の曲げ加工と、パイプ材の曲げ加工の違いについて少し整理をしておこうと思います。それぞれの材料の形態が異なる所を整理し、より理解を深めてほしいと思います。
板材もパイプ材も曲げ加工を行うと、曲げの内側には圧縮応力が働き、曲げの外側には引張り応力が働きます、また、曲げの加工時にスプリングバックも同じように発生しますし、曲げた部分は薄くもなります。では、板材の曲げとパイプ材の曲げで異なるのは何か?と言うと、当たり前ですが中に材料が「詰まっているか」「詰まっていないか」により曲げの方法が異なるところです。当然の事ながらパイプ材の曲げでは、いかに「扁平させずに曲げる」「減肉させずに曲げる」ことが望まれます。内部に流体を流す場合には扁平していると、曲げ部で流量が変化し「脈動」が発生し必要な流量が確保できないことが想定され、減肉していると耐圧荷重に耐えられないことが発生します、また、構造体で曲げ部に扁平が発生していると強度が低くなる場合もあります。パイプの曲げの難しさは、元の形状を保ったままで曲げ加工をするところにあり、スプリングバックの対策でも板材の曲げとは異なった調整の難しさがあると言えます。板材のスプリングバック対策に「コイニング」が有りますが、パイプ材では扁平してしまうため用いることはありません。金属板の曲げとパイプ材の曲げではそれぞれに異なる設備で加工しているのはパイプの扁平を最小限に押えて曲げ加工を行うところにあります。
パイプを曲げ加工した時の現象を3つの加工形態で説明します。
「通常の曲げ状態」を下図左に示します。パイプを曲げ加工するとパイプの外側には引張り応力(+σ)が発生し肉厚は薄く、内側には圧縮応力(-σ)が発生し肉厚は厚くなります、また、応力が±0の中立するポイントが中立軸として存在します。この中立軸は曲げ加工時の力の加え方により曲げ位置に対して内側や外側へ移動します。
「引張曲げの状態」を下図中央に示します。引張曲げはパイプ素材に常時引張る力を加えたままの状態で、金型に押し付けて曲げる方法になります。この状態で曲げ加工を行うとパイプの中立軸が曲げの内側へ移動し、パイプ外側の引張り応力が大きくなり逆に内側の圧縮応力は小さくなります。この曲げ方法では、パイプの扁平が起こりやすくなり、パイプの板厚も、外側で薄くなります。
「圧縮曲げの状態」を下図右に示します。回転引き曲げ加工法で、曲げ外側の減肉を防止するため、一部のベンダー機には後方から圧力を掛ける機能を持った設備が有ります、曲げ加工時にパイプのクランプ側(後方)から「ブースター」などを使用し圧力を加えながら加工した場合に起きる現象で、中立軸が外側へ移動した状態で加工が完了します。このため、曲げの外側の引張り応力が小さくなり内側の圧縮応力が高くなります。このため比較的曲げ部の扁平と減肉が抑えられた形状で成形をすることが出来ます。曲げの半径rが比較的小さく曲げの外側に割れが発生するなどの現象を対策する場合に有効な加工方法となります。

パイプ部品を製作する上で材質を十分考慮し加工を進める必要が有ります。同じ曲げ半径で同じ曲げ角度で加工するにしても、材質により加工性が異なります下表に材料毎の加工性と加工上のポイントをまとめています。鉄系の材料でも材質により曲げ加工が容易なものや同じ材質でも指定強度が異なることで加工性に影響が出るなどもあり、加工時に注意が必要となります。非鉄金属でもアルミニウム材や銅材の曲げ加工では、曲げ半径の検討が必要な事と、加工後の加工硬化しクラックや割れが発生する事もある為、注意が必要となります。特に、アルミニウム材の曲げ加工時に加工油を使用すると変色することがまれにあります。これは、元々アルミニウム材が多孔質であることと、曲げ加工により表面組織が肌荒れし、そこに加工油分が浸み込むことが原因であり、使用する加工油の選定についても十分検討をする必要が有ります。

パイプを曲げの代表的な加工方法を説明します。下図左に記載している方法が押し曲げ方式で、プレス機に金型を取付け加工します。下型に指示型があり、支持型上にワークを置き、プレスが下降する事でパイプが曲がり、下図のように下死点で指示型は跳ね上がり成形されていきます。パイプ径が大きくなると扁平が発生するため、マンドレルと呼ばれる芯金を入れて加工する事で変形を防止します。
下図中央の加工方法が圧縮曲げになります、固定した曲げ型に巻きつけていく様に加工し、パイプの一方を締付け型で曲げ型と固定し、クランプが曲げ型の形状に合わせて移動する事で加工を行います。この圧縮曲げの設備では機械式や手動(ハンドベンダー)が有ります。
最も普及し、NCタイプも供給されているのが下図右の回転引き曲げ方式になります。構造は圧縮曲げ方式によく似ていますが中央の曲げ型はパイプの曲げに連動し回転します。また、締め型と回転曲げ型でワークを固定し引きながら曲げていきますがパイプの外に広がろうとする力を圧力型で押えて加工します、この圧力型も曲げ加工に追従して進行方向へ移動します。曲げ加工時の肉余り状態が大きくなると曲げの内側に“シワ”が発生します。この“シワ”を押えるためにワイパーが配置されています。パイプの扁平防止にマンドレル(芯金)を入れて加工します。更に曲げ加工時の扁平や割れを防止するため、後方からの加圧を行うブースターをつけている設備もあり、この曲げ方式は、比較的曲げ半径が小さく高精度な曲げ加工に向いた加工方法になります。
4つ目の曲げ加工方法がロール回転曲げ方式になります。この曲げ方法は、3~7個のロールを使用してパイプを曲げ加工するもので下図は4個のロールで曲げる方式になります。1セットのロールで複数の曲げRに対応が可能な加工方式になります。曲げ加工自体は比較的大きな半径で曲げるもので、設備や階段の手すりなどの加工に用いられます。

それぞれの加工方法とその特徴を下表に示します。

材料の展開寸法の求め方と端末加工について解説しました。
弊社では高精度なパイプ曲げ加工から複雑な端末加工まで、難度の高い技術に幅広く対応しております。
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