当コラムでは、絞り金型と絞り加工のトラブル事例を紹介します。
↓ 無料ガイドブック「絞り加工の基礎知識」のダウンロードはこちら ↓
絞り加工時のトラブルや対策を説明する上で、先ずは絞り金型の構造を理解する必要があるため、絞り金型の代表的な構造と、構成部品の機能について説明します。
下図の絞り金型では、プレス機のダイクッション機能を活用し、しわ押え圧力を調整できる構造で上向きに絞り加工をする金型構造になります。前回の絞り加工の工程設計方法でも述べていますが、絞り加工時の基本的な設計と絞り加工時のしわ押え力の調整が出来る事で、しわ不良や絞り加工時の割れなどのトラブルを低減する事ができます。
絞り加工を行う上では、この加工に適したプレス機もあり、ここで少し述べておきます。一般的な「メカニカルプレス」であれば、加工速度が調整できる(出来るだけ一定速度でゆっくりと加工できる)ことや、ダイクッション機能があることがあります。最近のサーボプレスでは油圧モーションなどのプレスストロークを自在に変更する事の出来る設備もあります。深絞りの加工であれば、「油圧プレス」による成形も有効となります。これは油圧プレスの加工が一定速度で下死点まで下降し成形できるところにあります。
以前には深絞り専用設備「ドローイングプレス」もありましたが保有されているプレス加工先もわずかとなり、現在では油圧プレスやサーボプレスに置き換わってきています。
当然のことですが、製品を加工する上で基本となる「4Mの条件」を整えた上で加工を行う必要があります。
↓ 無料ガイドブック「せん断加工の基礎知識」のダウンロードはこちら ↓
絞り加工時に発生するトラブル事例とその対応方法について説明していきます。
製品の工作検討(具体的な加工工程を決める検討)の結果に基づき、絞り金型の設計・製作を行い、その後は実際にプレス加工を行い、製品を作ります。この作業により工作検討の結果や金型設計の良し悪しが明確になります。
これから説明するトラブル事例は、この金型製作時の問題と、量産に入ってから発生するトラブルが有りますのでその段階に沿って説明をしていきます。
ショックラインは、「ショックマーク」「リングマーク」と呼ばれる事もありますが本技術コラムでは「ショックライン」として説明をします。
ショックラインは、下図に示す様に複数の絞り工程を経て完成となる場合に、初工程の角R部で肉厚が薄くなった部分が、円筒部に移動する事で発生します。この板厚が薄くなる原因は、パンチが材料に当たり加工が進むに連れて、材料の成形R部に絞り方向、円筒方向の両方に引張り応力が働くことで材料が引き延ばされるためです。下図に示す事例では、絞り工程は2工程になり、ショックラインは1本ですが、更に深い絞り加工では複数工程を掛けて成形する事も有りますので、ショックラインも複数が発生する事になります。
このショックラインの対策では、絞り成形パンチやダイスのR寸法の変更が有効です。具体的には、Rのサイズを大きくする事で改善する事が可能となります。また絞り加工工程間のRサイズのバランスを取る事も必要となります。しかし、このショックラインは完全に無くすことができない為、絞り加工後のしごき(アイヨニング)加工を入れる事で均一な面に仕上げ直し成形面をきれいにすると共に寸法精度を高める事ができます。
一般的なしごき量は10%程度に設定しますが一回で加工できるしごき量は、材質にもよりますがおおよそ30%になります。
しわ不良では、大きく2つの現象が有ります。1つはフランジ部のしわで、もう1つが口辺りしわになりますそれぞれの不良現象の原因は異なる為、それぞれに説明をしていきます。
加工材を、絞り金型のブランクホルダーにおいて絞り成形を行います。この際に、しわが発生しない様に、ブランクホルダーにはクッションピンで圧力掛けてしわを押えながら加工していきます。この際のクッション圧力が低いとしわの発生となります。また、逆にクッション圧力が高い場合には、材料が流れにくくなり、底が抜けてしまう現象となります。金型製作後の初期トライ時には、このクッション圧力の設定を決め最適な条件を見出して加工を行います。
口辺りしわは、ブランク材の外径サイズと絞りダイスのR寸法でR寸法が大きすぎると、絞り加工の終盤でブランクホルダーから材料が外れしわ押え力が無くなる事で発生する現象です。
ダイスRの設定は板厚に対して約4倍から20倍程度に設定するのですが、この範囲の上限よりもしくは範囲を超えている場合に発生します。対策としてはダイスRの寸法設定を小さくする等の対策が有効となります。
プレス加工不良は、金型製作時に対策を行う事で解消されますが、打ち抜き加工時のバリ不良と同じように、金型の摩耗などにより発生する不良も有ります。
絞り加工時のしわ不良も金型の摩耗により発生する事が有ります。しわ不良の場合には、ブランクホルダーの摩耗によりしわ押え力が弱くなる事でしわ不良が発生します。ブランクホルダーに焼き入れが施されている場合には発生頻度は低いですが、それでも長期間使用するとブランク材の接触部が凹みを生じる事や、クッションピンの当たりの部分が凹むことでしわ押え力が低くなりしわの発生となります。極まれでは有りますが、クッションピンの種類を複数持っておりセットするピンのサイズが異なると、クッション圧が均一に掛からず部分的にしわが発生するなどの現象が発生する場合も有ります。(クッションピンもしっかりと管理が必要です)
また、ブランクホルダーの板厚が薄い場合には、僅かな歪などで均一にブランクが押さえる事ができず部分的なしわの発生が起きる事も有ります。こういった場合にはまずブランクホルダーの摩耗を調査し修正する事が必要となります。
今回は、絞り金型と絞り加工のトラブル事例解説しました。
当サイトでは、この他にもプレス金型・プレス加工に関するコラムを多数掲載しております。ぜひご覧ください。
>>コラム一覧はこちら
当社は、設計提案から完成品組立までを一貫対応するOEM生産体制、独自技術によるコストダウン提案、さらに大手企業との信頼に基づく実績と、高品質な量産体制など他にはない強みを多数保有しております。
>>当社が選ばれる理由はこちら
プレス金型の設計やプレス加工のことなら、プレス加工をはじめとする金属塑性加工のプロフェッショナルである髙橋金属にお任せください。
>>ご相談・お問い合わせはこちら
関連情報はこちら
本記事では、板金加工における「曲げ加工」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
本記事では、板金加工における「曲げ加工」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
本記事では、板金加工における「レーザタレパン複合機」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
本記事では、板金加工における「レーザ切断」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
本記事では、板金加工における「外形加工専用機」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
本記事では、「板金加工における部品展開」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
本記事では、「板金加工(工場板金)の全体像」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
今回は、プレス加工:冷間鍛造(後編) 複合押出し、密閉鍛造について紹介しています。ぜひご覧ください。
本記事では、プレス加工:冷間鍛造(前編) 型鍛造、前方押出し加工について紹介している記事になります。ぜひご覧ください。
本記事では、プレス加工:圧縮加工(冷間鍛造‐据え込み、修正仕上げ打ち加工)の特徴について紹介している記事になります。ぜひ最後までご覧ください!
本記事では、プレス加工:圧縮加工(冷間鍛造‐コイニング・ポンチング・刻印加工)の特徴について紹介している記事になります。ぜひ最後までご覧ください!
本記事では、成形加工(縁曲げ(フランジ成形、カール成形)、口絞り成形、矯正及び型打ち)の特徴について紹介している記事になります。ぜひ最後までご覧ください!
本記事では、成形加工(エンボス加工、バルジ張出し加工、つば出し加工)の特徴について紹介している記事になります。ぜひ最後までご覧ください!
本記事では、張出し加工と絞り加工の違いについて説明をしています。 是非、ご確認ください。
本記事では、角絞り加工時に起こる引けの抑制方法について、説明しています。是非、ご確認ください。
本記事では、深絞り加工の基礎についてご説明しています。深絞りの定義や知っておくべき数値、絞り加工油や絞り金型について解説していますので、ご確認ください。
本記事では、絞り加工のトラブル事例、割れ不良・絞りキズ・底部変形について説明しています。是非ご確認ください。
本記事では、絞り金型と絞り加工のトラブル事例について詳しく解説しています。是非ご確認ください。
本記事では、プレスの絞り加工について、プレス加工のプロフェッショナルが解説いたします。
本記事では、プレス曲げ加工の一つであるカール曲げ加工(カーリング)の種類と加工工程について、プレス加工のプロフェッショナルが徹底解説いたします。
本記事では、曲げ加工において大きな問題となるスプリングバックの原因と対策、そして曲げ加工の種類について、プレス加工のプロフェッショナルが徹底解説いたします。
プレス加工は、目的とする製品形状や品質によって分類することができ、その数は数十種類とも言われています。これらは、パンチとダイで素材を分離するせん断加工と、板材を目的の形状に変形させる塑性加工という2つに大別されます。本コラムでは、せん断加工をさらに細かく分類した8種類の加工法についてご紹介します。
精密せん断加工(英:Precision Shearing)とは、トラブルの元となるダレ・破断面・バリといった断面形状を可能な限り無くし、綺麗な切断面を得るためのプレス工法になります。本コラムでは、4つの精密せん断加工についてご紹介したうえで、その中でもファインブランキング加工と対向ダイスせん断法について深く掘り下げて解説いたします。
本記事では、パイプ加工の中でも難易度が高いとされる3次元曲げと端末加工技術について、パイプ加工のプロフェッショナルが詳しく解説いたします。
プレス加工の一つ、シェービング加工をご存じでしょうか?シェービング加工は、通常のプレス加工では得られないせん断面を得ることができる工法です。本記事では、シェービング加工と板厚の全面にせん断面を得るための加工ポイントについて、プレス加工のプロフェッショナルが徹底解説いたします。
当記事では、プレス加工の”縁切り型”について詳しく解説しております。縁切り型の特徴や種類、構造について詳しくご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
当記事では、プレス加工の”分断型”について詳しく解説しております。分断型を使った分断加工のポイントや加工事例についてもご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
当社の高度コア技術である型内ネジ転造加工技術と加工事例についてご紹介しています。生産中の動画もご確認頂けますので、是非ご覧ください!
当記事では、切り込み型について説明しています。ルーバー加工やランスロット加工についても併せて説明していますので、是非ご確認ください。
金属の溶接方法には、アーク溶接やレーザ溶接など、様々な種類が存在します。各種溶接にはメリットやデメリットがありますが、それらを把握することで、適切な溶接方法を選定でき、高品質化及び最適コストの実現が可能となります。 ここでは、様々な溶接方法のメリットとデメリットをご説明させて頂きます!
当コラムでは、QCD全ての面でメリットを提供するネットシェイプとニアネットシェイプを、実現するための理想的な加工法をご説明します。 ぜひご一読ください!
当記事では、穴抜き型についてご説明させて頂きます。
金属塑性加工.comを運営する高橋金属では、11軸・9軸・8軸の多軸溶接ロボットを保有し、大物溶接品の溶接に対応しています。また、大物製品の組立まで対応できるOEM生産体制を構築しています。大物製品のOEM委託先をお探し中の皆様、お気軽に当社に御相談ください。
当技術コラムでは、せん断加工の中で基本的な加工である打抜き加工に使用される、打抜き金型ついてご説明します。
プレス加工の分類において、「素材の分離」に属する、せん断加工を行うための切断金型についてご説明します。
今回の技術コラムでは、プレス金型の設計に焦点を当て紹介をしていきたいと思います。
金属における加工方法の一つである鏡面加工について説明します。金属塑性加工.comの視点で、詳しく解説いたしますので、参考にして頂けますと幸いです。
金属における加工方法の一つである塑性加工について説明します。金属塑性加工.comの視点で、詳しく解説いたします。
溶接方法の中でもメリットが多いとされるロボットによるファイバーレーザ溶接の課題やデメリットについてご説明します。課題を解決する当社のコア技術についてもご説明しますので、是非ご確認ください。
理想的な工法とされるネットシェイプ・ニアネットシェイプを可能とする塑性流動成型加工の一種である冷間鍛造加工についてご説明させて頂きます。
トランスファープレス加工をはじめ、プレス加工工法についてご説明します。当社の独自ラインである、3連トランスファーダンデムラインについてもご紹介しますので、是非参考にしてください。
プレスFEM解析技術、溶接熱歪解析技術を持つ当社が、CAE解析についてご説明させて頂きます。合わせて、FEM解析やFVM解析、当社のコア技術についてもご紹介します。
当社の表面処理鋼板材接合技術を用いることで、メッキを剥がさずにZAM材を溶接することが可能となります。
アーク溶接における溶接欠陥の発生原因を紹介します。