板金加工:アーク溶接について
本記事では、板金加工における「アーク溶接」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
技術コラム「絞り加工のメリット・メリット」でプレス加工における絞り加工の紹介をしましたが、絞り加工における「深絞り加工」について紹介していきたいと思います。
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一般的には製品の直径以上の深さに絞り加工を行ったものを「深絞り加工」と呼んでいます。例えば円筒絞り加工で、製品直径Φ20㎜で絞り深さが20㎜以上の場合を深絞り加工と呼ぶことになりますが、自動車や家電部品を構成する部品ではもっと深い絞り加工により成形された部品が有りますので、どの様な事を配慮し加工を行うかを紹介したいと思います。
深絞り加工は、金型設計・製作精度のみではなく、被加工材の材質指定、加工油選定など、様々な要素をバランスよく設計する事で実現できる加工工法であると言えます。それぞれの要素について説明していきます。
プレス加工工程の検討を行う上で、被加工材の選定が重要で特に深絞り加工を行う上で「絞り加工用の専用材料」があります。冷間圧延鋼板(SPC材)では絞り性を配慮した“D材”“E材”と言った材料が有ります。この様な材料は機械的特性である、①引張り強さ②降伏点③伸び④硬さの中で特に降伏点の上限が設定され、伸びが“C材”よりも更に伸びる特徴があります。この2つの特性を管理した材料は絞り性が高くより深い絞り加工に適した材料となります。
深絞り加工を行う上で知っておく必要のある3つの数値が有ります。「加工硬化係数(n値)」「ランクフォード値(r値)」「限界絞り比」です。
それぞれの示す値と考え方について説明していきます。
加工硬化係数は、材料に圧縮・引張り等の荷重を掛けることにより材料が硬くなる性質をあらわす値で、この数値が高いほど加工した時に硬くなる事を示す値です。
オーステナイト系ステンレスSUS304、SUS301、フェライト系ステンレスSUS430に比べ加工硬化しやすい材料ですし、加工しやすいと思われがちな黄銅板も加工硬化しやすい区分の材料になっています。(表1を参照)
銅材やアルミ材の末尾に「1/2H」「H24」の表記がある物は素材に調圧を掛けて硬度の高くしている材料であり、素材状態から加工を行う事で硬化はしづらい材料となっています。
加工硬化係数と深絞り加工の関係、絞り加工の場合には成形の過程で材料に圧縮・引張りの荷重が掛かります。絞り加工の縁の部分のR部は円周方向に圧縮荷重が働き、プレス方向に引張り荷重が働きます。この加工硬化係数が高い場合、ある程度の荷重では硬度が高い事で引張り荷重に対する減肉が抑制され割れにくくなります。逆に低い場合には伸びやすくなることで、割れやすくなるとも言えます。
深絞り加工の成形を複数回行い狙いの寸法に仕上げる場合には、加工硬化が進む為、加工硬化した状態をリセットする必要が有ります。
加工硬化はなぜ起こる?
金属に力を加えると、初めは変形しても力を抜くと元に戻ってしまします(一般に言われるスプリングバックで弾性変形域)応力ひずみ線図で見ると降伏点以下(下図の青線の範囲)でこの現象が発生します。金属に力を加え続ける事で元に戻らなくなります。これは降伏点を超えた力を加えることで、原子の面がすべることで起きる現象(塑性変形域)です。
この原子の面ですべる現象を転位と呼びます。力を加え続けると新たな転位を生み出して変形していくのですが、ある程度、転位が増え続けるとお互いに絡み合って動けなくなります。この状態で更に転位を動かすためにはもっと強い力が必要になります。この状態を加工硬化と呼びます。
加工硬化したものを更に加工する
深絞り加工は一回のプレス加工で完了する事はなく、複数回の絞り加工を経て完成品とします。しかし、さきに述べた様に加工硬化してしまうことで伸びも悪くなり、ワレやくびれと言った不具合が発生しプレス加工が出来なくなってしまいます。そのため一旦加工硬化したものを加熱処理する事で原子が動くことができる温度まで加熱する事で転位が消え軟化させることができます。(焼鈍し処理)
金属を引き延ばしたときに板厚方向よりも板の幅方向で縮やすい材料であるかを示す値でこのランクフォード値が大きいほど絞りやすい材料であると判断していきます。
絞り加工時には材料の幅方向に縮みやすいものとそうでないものがあり、幅方向に縮みにくい材料を深絞り加工すると、板はしわになって円筒部に流れ込みにくくなると同時に板厚は薄くなり破断してしまいます。すなわち深絞り加工に適した材料は、板幅方向に縮みやすく板厚方向に薄くなりにくいものが適していると言えます。
限界絞り比は、1回の絞りで破断を起こさずに円筒を絞る事の出来る破断限界ブランク径を絞り成形を行うためのパンチ径で割った値を言います。この値の設定はおよそ「2」の付近の値となる事が一般的です。
材料の絞りやすさを示すランクフォード値とプレス加工における加工の難易度を示す限界絞り比には比例の相関関係があります。下図に示す様にランクフォード値が増加(絞りやすくなる)と限界絞り比もより厳しい加工に対応ができる事が実験の中で検証されています。
深絞り加工上の必要な要件に、プレス加工油が有ります。プレス加工油は加工時に発生する焼き付きの防止やプレス加工時の潤滑油として活用されます。絞り加工時に発生する高い加工圧により、油膜切れが発生することで焼き付きが発生します、また、油膜切れにより潤滑が悪くなり成形性も落ちる事が有ります。
プレス加工油の選定時には、被加工材の材質、絞り率等を考慮し選定する事が必要であり、加工油メーカーも加工内容に合わせ加工油のラインナップを揃えています。
但し、近年の環境に対する配慮から、プレス加工油の成分に配合される極圧添加剤も、塩素やイオウを使用しないものが開発されてきています。製品立上げ当初に設定した加工油が、事情により変更される事で加工時にしわや割れ、くびれと言った現象が発生することも有るため加工油の変更についても慎重に行う必要があります。
深絞り加工では特に、プレス加工時の焼付きが問題になります。事前に行える対策として、パンチ、ダイスへの表面処理(TiC、TiCN等)の表面処理を行う事で、パンチ、ダイスの表面に極めて高い硬度の表面処理を施すことで耐摩耗性を向上させることが有ります。また、加工油の塗布についても、予め素材に塗油する方法から、金型内から加工油を給油する方法などがあり、加工油の油膜切れを防止し割れ不良や傷と言った不良を出さない対策を取る事も有ります。
金型製作時にこういった対策は事前に検討をしておくことで耐久性の高い金型を製作する事ができます。
今回は、深絞り加工について解説しました。
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