板金加工: 曲げ加工について(前編)
本記事では、板金加工における「曲げ加工」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
プレス加工は、目的とする製品形状や品質によって分類することができ、その数は数十種類とも言われています。これらは、パンチとダイで素材を分離するせん断加工(英:Shearing)と、板材を目的の形状に変形させる塑性加工という2つに大別されます。後者には、曲げ加工や絞り加工、成形加工、圧縮加工などが属します。
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まず、切断の加工原理について解説します。
図のようなせん断加工の荷重―ストローク線図に示す様に、板材をパンチ・ダイで切る過程で、パンチが材料に当たると、材料は①の様に「だれ」が形成されます。
更にパンチが降りていくとせん断面(1次せん断面とも言う)が形成されます。せん断面が形成され材料の耐力を超えると③クラックが発生します。この直前でせん断荷重は最大値(P)を示します。クラックが伸び最終的には④の様にクラックが連通(繋がる状態)となり荷重は急激に下がります。更にパンチが下降するとクラックは破断面となり切断が完了されます。パンチは下死点を過ぎると上昇しパンチから材料がストリッピングされます。
せん断加工の中で、打抜き加工が基本的な加工方法となります。一般的には「外形抜き」「ブランク加工」等で呼ばれる事が多く、製品加工を単発プレス加工で行う場合の初工程には、この工程が含まれます。単純な丸形状、四角形状から、複雑な形状まで打抜き型で加工される事が多く材料の歩留まりについても、打抜き工程で決まってきます。
複雑な曲げ形状の製品の場合には、曲げ加工時の材料の延びが影響し寸法精度に影響が出る事から、ブランク形状を決定するため、予めレーザ加工等でブランク形状をつくり曲げ加工で確認してから最適な、ブランク形状を最後に決める場合もあります。
せん断加工には被加工材に穴を抜く、穴抜き加工があり、その金型を穴抜き型と呼びます。穴抜き加工は、ピアス加工と呼ばれる事も有ります。(レーザ加工ではピアッシング加工と呼ぶ穴あけ加工が有ります)
穴抜き加工は、製品の仕様に合わせて丸形、四角、楕円、異形形状等を穴抜き型により加工をします。
切込み型のプレス加工とは、一般的に、プレスストロークの中でワーク(母材)にパンチが入り切断され、そこから更にプレスが降下する過程でワークが曲げられる事で、部分的に材料が起こされる形状が作られる加工を言います。
また、順送金型で絞り加工形状の製品を加工する場合には、製品とコイル材を繋ぐランスロット部の加工に切込みを入れる方式があります。ワークに切込みを入れる事で、絞り加工時の材料の流れによるコイル材(母材)の変形が発生することを、防止する為に行うことがあります。
分断型とは、プレス加工によりワーク(素材)を要求される形状に成形した後に切り離すための金型のことを指します。下図のように製品の形状が非対称の場合は、成形時のバランスが悪くなり、形状を安定して成形することができません。こういったケースでは、対象形状に一旦成形した後に“分断加工”を行い必要な形状をつくります。この様に製品を分断する加工を行う金型を、プレス加工においては分断型と呼びます。
また、対象形状に成形した物を分断することにより2個以上の製品を取ることができ生産性向上につながるという点から、工作検討(製品の加工方法を検討すること)の段階から金型構造を設定することが必要となります。
縁切り型とは、プレス加工後に製品形状を仕上げるための金型です。絞り加工を行った後に不要となる縁部を切断する加工をトリミング加工もしくはトリム加工と呼び、それに用いる金型になります。
縁切り型の種類は豊富で、トリミング加工の方法ごとに、ピンチトリミング法、フラッシュトリミング法、ワイプダウントリミング法、トリムフランジ法などがあります。
シェービング加工は、プレス加工で打ち抜かれた製品の破断面を無くし、板厚の全面にせん断面を形成するために行われる加工方法です。下図に示すように、プレス加工を行うと普通せん断面が現れますが、切断面に綺麗なせん断面が欲しい場合があります。この時に、ワークの端面部をわずかに削り取り仕上げる加工を「シェービング加工」と呼びます。
シェービング加工では、母材の板厚に対し3~10%程度の削り量を目安に設定し加工を行います。この削り量は薄い方がきれいな切断面が得られますが、ワークの板厚や普通せん断時の状態により、1回では全せん断が得られず、2回~3回のシェービング加工によりやっと全せん断面が得られる場合もあります。
通常のせん断加工を普通せん断と呼びます。普通せん断の場合は、シェービング加工の解説コラムでも述べた通り、「ダレ」、「1次せん断面」、「破断面」、「バリ」で構成された断面形状となっています。
この断面形状の内、「ダレ」「破断面」「バリ」は部品機能にも影響することがあるため好ましくありません。例えば「ダレ」は、ボルトによる固定を行う場合に接触面積が少なくなり必要な締結力を得られなくなります。また位置決めとして端面を使う場合には、「破断面」があることで線当たりとなって摩耗が進むことで位置決めの機能が低下します。さらに「バリ」の発生は、組付け時のケガや、無事に組付けされても使用中にバリが落下することにより電気部品のショート、摺動部品の異常摩耗など様々なトラブルを引き起こす可能性があります。
上記の問題を引き起こすような断面形状を改善し、良好な切断面を得る工法が「精密せん断工法」です。
代表的な精密せん断工法としては、①シェービング加工、②仕上げ抜き法、③ファインブランキング加工、④対向ダイスせん断法があります。
②の仕上げ抜き法は1回の加工で綺麗な切断面を得る方法で、通常の抜きのクリアランスよりも小さい設定「0(ゼロ)」に近づけて加工する方法になります。ブランク加工であればダイスの刃先に、穴抜きであればパンチの刃先にR0.3程度の丸みをつけますが、ブランク抜きではダイス刃先にRを付けることで、切断部近傍に圧縮応力が発生するためソリが大きくなることが欠点です。
>>ファインブランキング加工と対向ダイスせん断法について詳しくはこちら
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