板金加工: 曲げ加工について(後編)
本記事では、板金加工における「曲げ加工」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
本記事では、プレス加工の大きな区分の中の「塑性変形・板材の成形」に該当する曲げ加工について詳しく解説します。
プレス加工の中区分である「板材の成形」は、さらに「曲げ加工」「絞り加工」「成形加工」という3つに細分化することができます。
今回から、「曲げ加工」について掲載していきます。
曲げ加工において大きな問題となるスプリングバックの原因と対策、そして曲げ加工の種類についてもご紹介します。
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プレスの曲げ加工を行う上で一番の問題となるのが、スプリングバックです。まず、曲げ加工時に発生するスプリングバックの発生原因について説明します。
上図は、荷重―伸び変形曲線です。荷重ゼロから上降伏点までを弾性変形域、上降伏点から上を塑性変形域と呼びます。図中のF1の荷重を掛けた時に、L1の位置まで変形しますが、荷重を取り去ることで、弾性変形域の傾きに沿って戻るため、L2の位置に戻ります。
このL1とL2の差がスプリングバック量となります。
また、曲げ加工を行った場合には、下図のように、中立軸に対し曲げの内側には圧縮応力が加わり、外側には引張応力が作用します。中立軸は必ずしも板厚の中央には無く、板厚が厚くなるにしたがって内側に移動し、曲げ加工時に曲げ部の板厚は減少します。
曲げ加工時の外力(荷重)が外れることにより、圧縮・引張応力の反発によって曲げの角度が開きます。これが曲げ加工時のスプリングバックと呼ばれる現象です。実際にプレス加工を行う上では、このスプリングバック量を見込んで金型の製作を行うこととなります。
また、製品の加工工程に配慮する内容として、材料の圧延方向の検討があります。曲げ加工を行う上で圧延方向に対して平行に曲げる場合と直角に曲げる場合では、平行に曲げた方が曲げやすい傾向にあります。しかし、高張力鋼板材などの高強度材の場合には曲げの部分に微細クラックが入り、割れが発生する事もあります。このため、スケッチ材(切り板材料)で購入する場合には圧延方向の指定を入れることが必要となります。
また、スプリングバックや、曲げ部の微細クラック以外にも、外形抜きを行った際の「バリ」が曲げの外側に来ると、曲げの外側には引張り応力が加わるため、割れが入ることがあります。L曲げやU曲げの場合は抜き方向を指定することで対策が可能ですが、Z曲げ、ハット曲げ等の曲げ方向がバリ側にもダレ側にもある場合については、曲げの外側にバリ面が来る部分のみ抜き方向を変えて加工することも一つの方法です。
プレス加工による曲げ加工方法は、大きく「Ⅴ曲げ」「L曲げ」「U曲げ」「Z曲げ」「ハット曲げ」等があります。それぞれの加工方法について説明します。
V曲げ加工は、上図のようにダイス上にワークをセットし上型により曲げ加工を行う方法で、最もシンプルな加工方法になります。Ⅴ曲げ加工の中には、自由曲げ(エアーベンドとも呼ばれる)や底付き曲げ(コイニング曲げ)があります。曲げの精度が必要な場合は、底付き曲げを行うことが多いです。
L曲げ加工は上図のようにパンチでワークを挟み込みプレス加工を行うことで、L形状に曲げる加工方法になります。
U曲げ加工も、L曲げ加工と同様にワークをパンチとノックアウトで挟みこみプレス加工を行うことで、U字形状に曲げ加工を行うものです。
Z曲げ加工は、1回の加工で2カ所の曲げ加工を行う加工方法です。通常であれば2工程を掛けて加工するところを1回で加工できるため工程短縮が図れるというメリットがあります。ただし、加工中にワークが移動することで曲げ位置が変わる場合があり、金型の調整を必要とします。
ハット曲げ加工は、上図に示すよう4カ所の曲げをプレス加工1ストロークで完了することができる加工方法です。第1曲げでU曲げを行い、そのまま、加工を進めることでハット形状の加工を行います。1曲げから2曲げに移るまでの間、ワークはパンチに食らいついている状態となっています。
今回は代表的な曲げ加工についてご紹介しましたが、これ以外にもカム機構を用いた曲げ加工もあります。
今回は、プレス加工における曲げ加工について詳しく解説しました。
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