複数の部品を組み付けることが多い板金製品の場合には、部品を取付ける「接合法」の選択が重要となります。製品に使用する材質、板厚に応じた接合方法を選択しなければ、接合強度が保証できず製品の機能を満たさないことや、保証期間内に破損するなどの問題が発生するため接合方法の選択と加工条件の設定が重要となります。
今回の接合に関する技術コラムでは、接合方法に対する体系と、それぞれの接合方法について説明していきたいと思います。
接合法の体系図を下記に示します。接合法では大きく「溶融接合」「液相接合」「固相接合」「機械的接合」に分類されます。
溶融接合は融接とも呼ばれる接合方法で、接合する母材を“溶かして融合する”接合方法です。母材の溶かす方法に「アーク」「高エネルギービーム」高電流を短時間で流す「抵抗」などの溶接と「ガス」を用いた溶接方法が有ります。
溶融接合の原理を下図に示します。この図では「原子」と「原子を繋ぐ“手”」で表しています。接合前の金属の状態では、母材(金属)とその表面には汚染物質や、吸着ガスなどが覆った安定状態(この汚染物質なども原子の手で結ばれています)となっています。この汚染物質や吸着ガスが表面に有ると、接合時のブローホールやピンホールなどの異常を引き起こすことや、溶融池内に入る事でクラック等を起こす場合も有るため、接合時には除去されることが必要となります。この表面の清浄化が行われる事で接合の準備ができ、その後に溶融金属が充填される事で接合されます。
論文:才田一幸, 材料接合の原理と金属接合技術, 精密工学会誌{Vol.77}, No.3,2011年{,P.274 図4} を参考
この接合方法では、母材を溶かすことなく、2つ以上の部品の間に接合材である「ろう材」や「はんだ」と言った母材よりも低融点の材料をスキマに流す事で接合する方法になります。
液相接合でも溶融接合と同様に、表面の汚染物質や吸着ガスを取り除く必要がありますが、先の溶融接合の様に高い熱を加える事が無いため、表面の清浄化に「フラックス」を使用し、表層が正常化された状態で「ろう材」や「はんだ」を入れて接合します。積層接合の場合には母材と「ろう材」や「はんだ」が結びつき接合される事になります。母材よりも柔らかい材料を入れる事で接合するため、接合強度が低くなる様に思われますが、部品間のスキマを詰める事で母材よりも高強度に接合する事が可能となります。
固相接合は固相拡散接合等で呼ばれる接合方法で、代表的な接合方法に摩擦攪拌接合(FSW)、ガス圧接、爆発接合、超音波接合と言った接合方法が有ります。この接合方法は母材を溶かして接合するのではなく、母材同士を密着させ、母材の融点以下の温度条件で塑性変形を出来るだけ生じない程度に加圧して接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法です。
摩擦攪拌接合は既に実用化されており自動車の軽量化を図るため、GA材(合金化亜鉛メッキ鋼板)とアルミニウム合金の接合や、一般的なメッキ鋼板とアルミニウム合金の接合でボンネット部品の接合を行う等の事例が報告されています。
ガス圧接は、接合する母材の端面部をガスで加熱しつつ両端から圧力を掛ける事で固相接合する方法で、建築に使用される鉄筋の繋ぎや、鉄道のレールなどもこの方法で接合されています。
超音波接合は同種、異種の材料を2枚以上重ねた状態で加圧をしながら、振動子により横方向や縦方向に振動振幅を加える事で発熱し接合する接合方法です。代表的な接合では電池の端子接合が有ります。特にラミネートタイプの電池の端子は、アルミニウム材や銅材が使われている事から積層された箔材の接合に超音波接合を活用される事が有ります。
固相接合の接合においても、接合前に表面清浄化が行われます。この場合には研磨、スパッタリング、高周波励起などで行われる場合や、摩擦攪拌接合、超音波接合の様に、加工のほぼ同時のタイミングで表面清浄化、母材同士を加圧する事で接合される工法があります。
機械的接合は「組バラシ」を想定した接合と、接合後に外さない場合があり、状況に応じて接合方法を選択します。前者の接合では「ボルト・ナット」を使用した接合が最もポピュラーな接合と言えます。また、後者の接合では、リベットを用いたリベットカシメや、製品の一方に穴を開け、もう一方に「エンボス加工」を設けエンボスを潰す事で接合する方法等が有ります。
接合法を分類する第1階層の4つの接合法について説明をしました。上記の分類図の第2、第3階層の接合技術をこれから詳細に説明していきたいと思います。
今回は、板金加工における接合について解説しました。
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