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レーザの種類とファイバーレーザの優位性

先に説明してきました各レーザ発振器のビーム品質を測る指標にBPP(ビームパラメータ積)が有ります。この指標は、発振されたレーザ光の広がり角θと発振部の径wの積で、下図に示す様にレーザ発振器から1000㎜の位置で、レーザ光がどの程度広がるかを示しています。レーザ光を熱源に加工する上でエネルギー密度の高さが重要となりますから、この値が小さい程加工できる範囲が広がる事になります。こういった面でファイバーレーザのBPPは他のレーザに比べ圧倒的に小さく、指向性の高いレーザと言えます。現在、レーザ加工の発振器はCO₂レーザからファイバーレーザに切替る過渡期で、今後はファイバーレーザが主流になると思います。

ファイバーレーザの発振方式を下図に示します。レーザ光を増幅する為のファイバーケーブルは中央部に「Yb添加中心コア」その外周に「第1クラッド」「第2クラッド」となっており励起用半導体レーザで作られた励起光は第1クラッド内を通り第2クラッドとの境界で全反射を起こし伝搬されます、励起光が中心コアを通過するときに、中心コアにドープされたYb(イッテルビウム)に吸収されるとエネルギの最も低い状態(基底順位)からエネルギーの高い状態(準安定準位)となり光が放出されます。これを反射ミラーの間で往復すると光は増幅されレーザ発振が行われます。
ファイバーレーザの高出力化には励起用半導体レーザを複数個用い、発振されたレーザを励起コンバイナで集約します。増幅用ファイバーに供給されたレーザ光は、高反射ミラーと低反射ミラーの間を往復し、ある一定の出力となったら、低反射ミラー側から高出力レーザ光として発振されます。ファイバーレーザは細いファイバー内で全反射を利用し光を閉じ込め増幅するため、その他のレーザ発振方法に比較しエネルギーの変換効率が高い事が特徴で、1㎾の電気エネルギーを投入しどの程度の出力が発生できるかで比較すると、CO₂レーザ:10%、ランプ励起YAG:3%、LD励起YAG:15%、ファイバーレーザ:30%となっており、ファイバーレーザのエネルギー変換効率が高い事が分かります。

 

レーザ溶接を行う上での設備構成について

レーザ溶接を行うための設備構成(概要)を下図に示します。「レーザ発振器」「チラー」「レーザヘッド」「6軸ロボット」が加工に必要な設備になります。また、安全対策(JIS C6802 レーザ製品の安全基準-日本産業規格)としてレーザ溶接中のレーザ光の散乱を防止のパーテーションも付随して必要になります。加工時には安全にレーザ溶接を行うため様々なインターロックが組込まれておりこれを制御する為のPLC制御が必要となります。レーザ溶接設備はシステムアップされた状態で販売されるものと、SI(システムインテグレータ)により加工内容や目的に合わせて作りこむ場合があり、後者の場合には設備の加工範囲は広範囲に対応が出来るため、こちらを選択し対応している場合があります。
また、レーザ溶接を行う上で、溶接時の酸化防止が重要となるため、「窒素ガス」「アルゴンガス」などのシールドガスの噴霧が出来る様にシステムアップされている事が必要となります。

 

レーザ光の2つ発振方法について

現在、主に活用されているレーザ光の発振方法(レーザ光の作り方)についてこれまで述べてきました。ここではレーザ光の発振(出力の仕方)方法について説明していきたいと思います。レーザ光の発振方法は下図に示す様に主に2種類があり、1つはパルス発振でもう1つが連続(CW)発振になります、これらのレーザ光の発振方法はそれぞれの使用用途や、要求品質に合わせて設定します。
下図左側に記載しているのがパルスレーザ発振になります。この発振方法は、レーザ光の発振、停止を繰り返し行う発振方法です、これを行う事のメリットとして、歪量の少ないレーザ溶接において、更に歪を低く抑える事ができます。パルス発振では加熱(出力)と冷却(停止)を繰返すことで接合時の入熱量を下げる事ができるため歪を押える事ができます。但し、発振と停止の1回の間隔であるデューティー比を小さく取りすぎると発振時間が短くなり接合長さも短くなる事から、あまりにも低歪を狙いすぎると溶接長さが短くなり必要な接合強度が得られない事になります。溶接速度・デューティー比と溶接強度・溶接歪を検証し設定する事が必要となります。レーザを用いた切断加工においては先端が鋭角になった形状等を、CW発振で切断すると入熱が高くなり溶落ちが発生する事が有りますが、パルス条件を活用する事で溶落ちが無い状態で切断する事も可能となります。また、近年ではパルス出力の発振幅を限りなく短くする「フェムト秒レーザ(10⁻15秒)」「ピコ秒レーザ(10-12秒)」「ナノ秒レーザ(10-9秒)」「マイクロ秒レーザ(10-6秒)」モードの開発が行われています、この発振方法で、ナノ秒以下のレーザ発振を超短パルスレーザと呼ばれ、微細な穴あけ加工等に活用されるようになってきています。
下図右側に記載しているのがCW(Continuous Wave)発振でレーザ光を連続し発振する方法となります。連続でレーザ光を発振するため切れ目のない接合を得る事ができます。高強度で、高い気密性を求められる製品等に活用されます。例えば、液体や気体を保管するタンクや検査機器に使用される真空容器などの接合が可能となります。特に溶接時の歪を押える事ができるため、容器の気密性を保つ為のOリング溝の加工やフランジ面の平面度を得るための切削加工の加工代を少なくすることで、材料の歩留まりの改善への寄与も得る事ができます。

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