板金加工:液相接合
本記事では、板金加工の溶接に含まれる「液相接合」の概要についてご紹介しています。ぜひご覧ください。

前回の技術コラムでは、エンボスプロジェクション溶接について詳しく解説させていただきました。
まだご覧になっていない方は、ぜひ下記リンクよりご確認ください。
前回の記事を読んでおくと、今回のテーマの理解がさらに深まります。
液相接合の原理については、技術コラム「板金加工における接合方法について」で説明しましたので、ここではもう少し加工設備や加工方法について、説明していきたいと思います。
>>「板金加工における接合方法について」のコラムはこちらから!
液相接合は加熱温度により適用される部品が異なります。下表に高温液相接合(以降ろう付けと呼びます)と、低温液相接合(以降はんだ付けと呼びます)の特徴を記載します。
ろう付けは使用する「ろう材」の融点が高いものを使用するため、加熱温度が高くなることから「鉄」「ステンレス」「アルミニウム」と言った母材の部品となり、接合強度も母材強度以上で接合ができます。対して、はんだ付けは、使用する「はんだ」の融点が低く加熱温度は高くても約450℃程度となり、主に基盤、電子機器などの電子部品の接合が主流となり「はんだ」自体の強度が低く、接合強度は低く、接合部に高い荷重がかかるような部品などには向きません。

ろう付け加工時の加熱方法には、「ガスバーナー」「誘導加熱」「加熱炉」「レーザ」などがあります。それぞれに特徴がありますので1つ1つ説明をしていきたいと思います。
①ガス溶接トーチ(溶接吹管(すいかん))による加熱方法
ろう付けに使用するガス溶接トーチは、「溶接機」や「溶接吹管」とも呼ばれ一般的には溶接トーチと呼ばれるものになります。この溶接トーチは下図に示すように、A形(ドイツ式)とB形(フランス式)の2種類があります。

A形のトーチは混合管から火口までが太く作られており、見るからに頑丈で重くて取り扱いしづらく、高価となっています。
B形のトーチの特徴は、スマートな形状で、トーチ自体が軽く取り扱いがしやすいところにあります。母材を均一に加熱するろう付けでは、火炎の当て方を左右上下に変えながら作業する為、取り扱いしやすいものが好まれます。作業性を考慮し当社でも溶接トーチはB形を採用しています。
溶接トーチの機能をB形トーチで説明します。燃焼ガス(アセチレンガス)と酸素を供給すると、本体のミキサー部で混合されます。火炎の調整は最初に、燃焼ガスを出して着火し、その後に酸素を供給しながら適正な火炎状態にしていきます(別途説明します)。ミキサーの内部構造を上右図に示します。燃焼ガスに対し酸素弁を調整しますが、酸素弁のつまみの奥にはインゼクタノズルがあり、その中央にはつまみと連結したニードルが有ります。このニードルの出し入れにより酸素の供給量が変わり火炎の状態が変化します。混合されたガスは、「混合管」、「混合ガス管」、「トーチヘッド」、「火口」を通過し火炎になりますが、火炎の状態を決めるのが「火口」になり、この火口の先端にある穴径により火力が決まります。穴径を小さいものから大きいものに変更する事で、火力の状態も小火力から大火力にすることが出来ます。部品が小さく精密なろう付けが必要な場合には小火力で加工し、大きな部品では大火力でろう付けするなど、加工内容に合わせて火口も選定します。
下表は溶接火口の番号と穴径を示したもので、種類は先に説明した溶接トーチの種類を示し、溶接トーチ毎の火口番号とそれぞれの穴径を示しています。また、B形溶接トーチは、各火口と対応する材料の板厚を色別し示してあります。例えば、B形0号の溶接トーチで50番(穴径φ0.7㎜)の火口では、板厚0.5~2.5㎜の材料を加熱する場合に使用する事になります。

②加熱炉による加熱方法
加熱炉によるろう付けは、一般的には炉中ろう付けと呼ばれるろう付け方法になります。炉中ろう付けでは、製品にろう材を予め取付け、炉内で過熱しろう付けを行います。加熱炉の種類を下表に示します。
・バッチ炉
金庫炉とも呼ばれ、箱型の炉を用い加熱を行い、加工品はラックなどに積込み、まとめて投入し炉内で冷却後に取出しします。
・連続炉
金属製のベルトコンベアで投入から排出まで製品を搬送し、加熱する炉内を通過することで、必要な温度に加熱しろう付けを行います。水素などの還元ガスを用い加工しますので酸化のない状態で仕上がります。
・真空炉
バッチ炉に加工方法は似ていますが、製品を投入後に炉内を真空状態にして加熱、ろう付けを行います。炉内に酸素・窒素などの不純物がないことと、真空状態で加工するためろう付け部にボイドやピンホールなどの欠陥がない状態で加工することが出来ます。魔法瓶はこの炉で製造されています。
・雰囲気炉
ろう付け時の加熱による酸化を防止するための還元性を持つ編成ガスを用いた炉で、連続炉やバッチ式の炉でも活用されており、還元ガスには水素ガスが多く用いられます。

③誘導加熱(高周波加熱)による加熱方法
高周波誘導加熱装置を用いて母材を加熱する方法になります。高周波電力を発振器により作り、発生した高周波電流を誘導コイルに流すと、コイルの周りには磁束線(高周波磁束)が発生します。この磁束線の発生によりコイル内の母材には渦電流が発生します。これにより抵抗が発生し母材が加熱されます。下図に示す様に誘導コイルとワークの隙間が小さいほど効率よく加熱ができるため、誘導コイルの形状を設計するところが重要となります。また、誘導コイルは非常に大きな高周波電流が流れ、高温となるため、銅管などを用いてコイルを冷却することが必要となります。最近では高周波コイルをAM積層により製作することも増えてきています。

④レーザによる加熱方法
レーザ光を用いた母材の加熱を行いろう付けを行います。「レーザブレージング」の呼び名で呼ばれることもあり、自動車のボディの隙間を埋めるなどに活用がされています。予め接合したい部分にろう材を置き母材と一緒に加熱を行い接合します。母材とろう材を同時に加熱するため溶接時の照射径よりも大きな照射径で加熱する条件設定を行います。

ろう付け設備についてのまとめ
現在、ろう付けに使用される設備は、製品や部品の生産量・接合範囲・接合数などを検討し選定します。設備として導入するに当たっては、導入費用も、加熱炉⇒レーザ設備⇒高周波加熱⇒溶接トーチの順に、導入費用が高額なものから比較的安価に導入できるものまで様々です。
加熱炉によるろう付け加工は、設備が大型であり、専門メーカーといった形態で行われることが多く、大量生産に向いた設備になります。また、レーザ設備の場合には、通常のレーザ溶接、積層造形、熱処理などの加工に活用される場合が多く、ブレージングによる活用は少ないようです。誘導加熱で活用される高周波加熱の方式も、熱処理への適用が比較的多いようです。先にも説明しましたが、こちらの設備については加熱用コイルの製作にノウハウが必要です。
最も安価な設備が溶接トーチによる過熱になりますが、手作業になるため、作業者のスキルが品質に影響することが多く、生産数も大量生産には向きません。
今回は、液相接合について解説しました。
当社ではろう付け溶接設備を保有しており、社内での施工も可能になります。
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