プレス・パイプ・板金・溶接加工 他社にはできない困難な課題を解決
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はじめに

前回の技術コラムでは、液相接合について詳しく解説させていただきました。
まだご覧になっていない方は、ぜひ下記リンクよりご確認ください。
前回の記事を読んでおくと、今回のテーマの理解がさらに深まります。

>>前回のコラムはこちらから!

ろう付け加工方法について
1)母材とろう材の融点について

ろう付けによる接合は、母材を加熱し隙間にろう材を流し込むことで接合する加工方法です。このため、母材の加熱温度とろう材の溶融温度の関係を理解しておく必要があります。下図に示すのは被加工材の溶融温度とろう材、はんだの溶融温度を示したものになります。
この図の見方を主に使われる材料で説明します。アルミニウムは約650℃で母材が溶融し始めるので、これよりも融点の低いろう材を選定する必要があります。そのため、アルミニウムろうやマグネシウムろうが最適な組み合わせになります。また、銅の融点は約1080℃なので、銀ろうなどの融点の低いろう材を選定します。鉄やステンレス材の融点は約1450℃付近です。下記に記載しているろう材であればどれでも良さそうですが、比較的安価で購入できる銅や黄銅といったろう材を選定します。
ろう付けを行う上では、母材を適正な温度に加熱し、フラックスを塗布し母材表面の清浄化を図ったうえでろう材を入れて接合します。そのため、加熱温度の設定が重要となります。

 

2) 母材の加熱温度とろう付け加工時の状態
① ろう付け時の温度管理

ろう付けをする上で、母材の加熱温度が重要になるのですが、炉中ろう付け等の加熱炉を用いた場合には設備で温度管理ができるので良いのですが、高周波ろう付けの場合には加工時の温度を予め確認し設定します。トーチろう付けでは、作業者のスキルアップを図り、母材の温度を判断し加工することになります。
下表は、母材の加熱温度・過熱時の母材の色・その時のろう付け加工の状態を示したものになります。ろう材はよく使われる銅・銀ろうになります。銀ろう付けを行う場合には母材温度が650~750℃になるよう、ろう付けを行う部分を全体を加熱します。銅ろうの場合には更に加熱温度が高く母材は800~900℃に加熱します。これ以上に加熱するとオーバーヒート状態となり強度やフラックスの機能が損なわれる状態となります。
実際の作業時に加熱温度を判断する方法として「温度チョーク(サーモクレヨン、テンピルスティックとも呼びます)」による確認方法があります。母材に温度チョークで印を入れて加熱するとチョークの指定温度になるとチョークが溶けてなくなります。この時の母材の色目を覚えておき、加熱状態を判断します。作業スキルが上がるとこの様な作業をする必要はないですが、作業習熟を図る過程でこの様な作業訓練を行うと習熟スピードが早くなると思います。
ろう付け加工は古くから行われている接合方法ですが、作業内容もできる限り数値化し加工状態を見える化すると、品質の安定化を図ることが出来ます。

 

② トーチによる加熱について

溶接トーチを用いたろう付けは、最も安価に設備を準備できるメリットと作業者のスキルに依存するところが大きいというデメリットがあり、特に加熱手順とフラックスの差すタイミング、ろう材の差すタイミングと差し量が重要となってきます。このスキルアップは作業教育と訓練の実施が重要となります。この中でトーチの火炎の設定状態は加熱時間や方法に大きな影響を与えますので少し説明をします。溶接トーチの火炎の着火は、最初にアセチレンガスを出して溶接用ライターで着火します。その後に酸素を供給し下図のような状態にします。目安は下図中の①白心の長さが約10㎜程度となる様にします。酸素とアセチレンガスの比率は1.04~1.14:1が良い配合になります。母材を加熱する際には白心の先端部にある②還元炎から③外炎を使い、ろう付けを行う部位が上表の650~700℃で均一になる様に加熱します。同じ場所を集中的に加熱すると母材が溶け始め表面が「ただれたような状態」になるため炎の当て方を調整しながら加熱を行います。

 

3) ろう材の「濡れ(ぬれ)」について
① 濡れの原理

ろう付け加工は、ろう材を加熱して液状にして接合する方法です。よって、液状のろう材が母材に馴染んでいかないと接合ができません。ろう材をいきなり母材に落とすと、ろう材は弾かれて、下図の(A)のような状態となります。この状態を「濡れ性がない状態」と呼び、このままではろう付けはできません。
下図は、母材に液体を滴下した時のぬれた状態を示しています。(A)は全く濡れがない状態になり母材と液体が接する角度θは180°になります。(B)は半分程度のぬれた状態で母材と液体の接する角度θは90°になります。(C)は母材と液体の接する角度θが90°以下の状態で最もぬれた状態になります。それぞれの状態で母材と液体はつり合った状態となっています。この状態で固体(母材)の表面エネルギー(γs)(表面張力とも言う)、液体の表面エネルギー(γL)、液体と固体の間の界面エネルギー(γSL)がつり合った状態で静止され、数式で表現したのが下図中の「ヤングの式」と呼ばれます。
ろう付けのポイントは濡れ性を改善するところにあります。母材(固体)の表面には酸化被膜が形成されており、これが濡れ性を阻害する大きな要因となっており、ろう付け直前に酸化被膜の除去を行うことで下図中のγs(固体の表面エネルギー)が大きくなり、濡れ性を改善することに繋がります。

 

② 濡れの種類

実際にろう材を入れると、2種類の濡れの現象によりろう材は付いていきます、その状態を下図に示します。1つ目の現象は母材間の小さな隙間に浸透していく現象で「毛細管現象」によるものです。
もう一つの現象が母材表面を広がる様についていく現象で「拡張」によるものです。

 

4)ろう付け手順

ろう付けの手順を下図に示します。ろう付けを行う場合には酸化被膜や母材表面の汚れを除去する必要があります。母材表面の清浄化が行われないと下図上の様にろう材が「はじき」濡れが起きません。母材を加熱し適温(650~700℃)になったところでフラックスを塗るとフラックスが溶け母材表面の酸化被膜や汚れが除去されます。フラックスが溶けると母材表面には透明な保護膜が形成されるため、ろう付けをする部分に均一にフラックスがついた状態で、ろう材を入れます。ろう材は、トーチの火炎を直接あてて母材に滴下させるように入れ、母材上でろう材が濡れる状態を観ながらろう付け部に広げていきます。必要なところまでろう材が広がると加熱を終了します。その後、母材とろう材が冷え固まりますが、この時にろう材の表面にはフラックスがガラス状となり覆われ、酸化が防止されます。

 

5)毛細管現象によるろう付けと接合強度について

2部品の接合をろう付けで行う場合には、部品間に隙間を設けておく必要があります。母材を加熱し、ろう付けを行うと毛細管現象により隙間に浸透し、接合ができます。この隙間の設定と接合強度の関係を下図に示します。部品間の隙間を横軸に、引張強さを縦軸にして、工具鋼、炭素鋼を銅ろうを用いて接合したときの強度を測定した結果になります。隙間がない状態に近づくと、母材の強度と同等の引張強さを示しますが、接合部の隙間が広くなるに従って、強度が低くなっていきます。特に工具鋼では隙間が0.05㎜程度になると急激に引張強さが低くなり、炭素鋼でも0.1㎜の隙間になると急激に引張強さが低くなっています。ろう付けではある程度の隙間がある方がろう材がスムーズに入りますが、広すぎると強度が低くなるため、製品の要求品質に合わせたクリアランスの設定が必要となります。
炉中ろう付けなどでは、母材の加熱が製品全体に均一に行われます。ろう材の浸透圧が高く軽圧入程度のクリアランスでも母材強度以上の接合強度を得ることが出来ます。加工方法の設定時にクリアランスの設定を決めておく必要があります。

 

6)フラックスの選定について

先にも述べておきましたが、ろう付けを行う上でフラックスの選定は接合品質を決める重要な材料となります。下表に示すのは、ろう材の種類と接合する母材に対して、どのようなフラックスを選定すると良いかを示したものになります。
弊社の場合、主に鉄関係の部品の接合にろう付けを行っており、この材料に最適なろう材は銀ろう、黄銅ろう、りん銅ろうになります。これに適合するフラックスの種類は「FB3」に該当するものになります。更に活性温度を見るとフラックスが溶けて液体になる温度が記載されています。薄板材や厚板材などで過熱する状況に合わせて、A、C,D,Kの種類から選定をします。ここで注目する事は、母材の加熱温度とフラックスの活性温度が近いところにあることで、母材温度の状態をフラックスの活性状態で見極めることが可能なことです。適正なフラックスの選定をすることで、ろう付けの品質を保証することが出来ると、フラックスの選定も重要な要件と言えます。
フラックスの配合物を見ると、フッ化物やホウ酸、塩化物が主成分となっており、ろう付け作業時に吸い込まないようにすることも、安全上重要となります。

 

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今回は、液相接合について解説しました。
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