板金加工:アーク溶接について
本記事では、板金加工における「アーク溶接」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
これまでに、タレパン加工、レーザ加工の技術コラムを記載してきました。この技術コラムでは、レーザタレパン複合機を活用した加工内容について、説明していきたいと思います。
レーザタレパン複合機は1台設備に「タレパン」と「レーザ切断」の2つの機能を持たせた設備になります。設備メーカーでは「パンチ・レーザ複合マシン」「ファイバーレーザパンチプレス」「パンチ・レーザ複合加工機」等、同様の機能を持ちながらメーカー毎に設備名称に特徴を持たせていますが、本技術コラムでは「レーザタレパン複合機」として記述していきます。
レーザタレパン複合機は、それぞれの設備の特徴を合わせ持ちますから、機械ごとに出来る加工内容の整理をします。
下表に示すのが「タレパン加工」と「レーザ加工」の加工できる内容を示したものです。板材(シート材と呼びます)のブランク加工を行う事はどちらの設備でも同様ですが、タレパンでは、成形する高さに制約は有りますが、立体的な加工が出来る所に特徴を持っており加工の出来る代表的な事例を右側の略図に示します。タレパンはワーククランプでシート材を把持し、X・Y方向へ移動しプレス加工を行う設備であり板厚も軟鋼板で最大3.2㎜までの材料になります。
また、複雑な外形形状をタレパンで加工する場合には、複数のパンチを使用し加工していきますので加工に時間を要する事と、打抜いた後は、材料に内部応力が残り「反り」「ねじれ」等の変形が発生する事が有り、特に限られた範囲で多くの抜き加工を施した場合に発生する事が有ります。また、パンチの跡が残り仕上げをする必要があります。
レーザ加工の場合には、タレパンの様な立体的な加工を行う事は出来ず、外形加工、穴加工、刻印(マーキング)等の加工に特化したものになりますが、タレパンでは不得意な、複雑な形状の外形抜きなどが得意な設備になります。レーザ加工機の特徴として、最大25㎜(鋼板)までの切断が出来る事と、加工速度が170m/min~340m/minと高速で切断加工が出来る所に有ります。
要約するとタレパン加工では薄板で立体形状の加工が行えるが、外形形状の複雑な形状が不得意であり、レーザ加工では、外形形状の複雑な物を高速で切断する事が得意な設備と言えます。
レーザタレパン複合機は「タレパン加工」「レーザ加工」のそれぞれの得意な加工内容を組合わせた設備となります。更に、レーザ加工機に搭載される発振器が、「CO2レーザ」から「ファイバーレーザ」に進化する事で、エネルギー変換効率は30%向上し、加工できる材料も銅やアルミ等の高反射材の切断が可能となってきています。銅材は材料単価が高く、歩留まり良く加工しなければ材料費が高くなります。
近年の電動化に必要な「導電部品」等は銅材やアルミ材を使用しており、且つ、複雑な形状をしている事から最適な部品の加工を行う上でもファイバーレーザ発振器を搭載したレーザ加工機が有望視されています。
レーザ切断機(専用機)の場合にはシート材は固定されレーザヘッドがX・Y方向にに移動し切断加工を行います。この場合、材料は固定されますから切断時のスパッタを考慮し「剣山型」のテーブル上にシート材を固定し切断を行います。この剣山型のテーブルもレーザ切断時のスパッタやレーザ光で溶け落ちてくるため定期的な交換が必要なパーツとなります。
タレパン加工機の場合には材料をワーククランプで把持し、X・Y方向に移動させながら加工するため材料の裏面側に傷が付きやすいと言った現象が発生します。以前には材料はフリーボールベアリング上に置いて加工する方式が多く、ベアリングの動きが悪くなると、傷つきの発生や、1mm以下の薄板を加工すると最悪の場合凹み形状が付くことが有りましたが、最近では「ブラシテーブル」を採用する事で、ワークの裏面の傷防止対策をされています。但し、ブラシも消耗品ですからすり減り短くなると傷の発生となりますから定期的なメンテナンスが必要となります。
レーザタレパン複合機の場合には、タレパン加工機と同じワークの保持方法(ブラシテーブル)を採用した設備となっています。
弊社が導入しているアマダ製のレーザタレパン複合機の場合、レーザヘッド側の動作とワーククランプ側の動作を同期させて様々な形状に切断する機構とされています。下写真の黄色矢印はレーザヘッドの動作、緑色矢印はワーククランプ側の動作となっています。
NC制御での穴抜き(円)加工は苦手な区分に属しています。直径10㎜の穴加工をタレパンの加工精度とレーザの加工精度で比較すると、レーザ加工での穴加工精度は若干落ちます。レーザタレパン複合機であれば、精度の欲しい位置決め穴などはタレパンで加工し、ラフな穴加工はレーザ加工で行う等のプログラム上の工夫を図る事で精度の高いものづくりを提供する事が可能となります。
1枚のシート材(3×6材、4×8材等)から、複数種類の部品を取り歩留まりを改善する「ネスティング加工」が一般的ですが、ブランク加工後に行うチギリ(部品の分別)、仕上げ(バリ取り等)を行う工程まで、部品がシート材から外れる事無く移動する必要があります。このシート材と部品の繋ぎを「ジョイント」と呼びます。ジョイントには「ミクロジョイント」「ワイヤージョイント」等の方法が有り下の写真に事例を紹介します。ネスティング加工を行う上で「ジョイント」の付け方が各社のノウハウとなります。ジョイントの数が少なく繋ぎが弱いと、加工時にタレパンの金型に引掛り加工できなくなる現象が発生しますし、これを嫌って強固に付けると、シート材が部品を外す際に傷をつける、変形させると言った事に繋がりますのでジョイント方法は会社のノウハウと言っても過言では無いと思います。
板金加工におけるブランク加工では、タレパン加工機、レーザ加工機、レーザタレパン加工機等の設備を活用し生産を行います。加工技術の高度化、NC制御の高度化が進み、加工速度も高速になり生産性も飛躍的に向上しました。こういった設備も材料供給装置を組み込むことで、夜間運転(近年では24時間稼働も可能)により生産性を高めています。これには、加工する部品のプログラム、材料の投入、加工時間の把握等、様々な加工技術や管理技術を用いる事が必要となります。
数値制御では、加工時に次々と加工点(座標)に移動し加工を進めていきます
座標間は円弧の指示で加工を行われます。下図は直径10㎜の円加工の加工イメージ例ですが、円加工を行う場合の座標数が20点の場合と72点の場合では繋ぐ座標の数が異なり、20点の方が粗くなり繋ぐ円弧は繋がりにくくなり「真円」にはなりません。近年のNC制御の進歩・搭載されるコンピューターの高速化により円加工を行うための座標数を増して限りなく円形状近くなってきていますが、厳密には「多角形」に加工される事から不得意と表現しています。
お客様の出される図面(製品図、部品図)は商品が機能するため(要求を満たす)のもので、機能に合わせて必要な公差を指定されてきます。例えば、JISで指定される一般交差から、はめあい公差まで記載がされる事が有ります。穴の公差でもΦ10±0.2の指定からΦ10(+0.05/-0)の指定まで様々な物があります。前記には0.4㎜の公差幅が有りますが後記では0.05㎜しかありません。同じΦ10㎜の穴加工でも指定される公差が変る事から同じ加工方法では図面通りの仕上がりが望めない事になります。
こういった場合の対処として、前記ではレーザ加工又はタレパン加工になり、後記ではタレパン加工となります。こういった加工工法の使い分けによりお客様の要求を満たす商品を提供できるのが、レーザタレパン複合機と言えます。
同じNC制御の加工設備でも、プレス金型を製作するためのワイヤーカット機の加工精度は0.005㎜と高精度な加工が可能となります。レーザ加工機の加工精度が±0.07㎜ですから同じNC制御設備でも加工内容により精度が異なります。
主なNC制御加工機の加工精度を下表に示します。切削加工機や金型を製作する為のワイヤーカット機は加工精度が求められるため高精度となっています。逆に加工時間を見ると加工内容が異なりますから一様にはなりませんがおおよそ逆転した加工時間となります。
■NC制御設備の加工精度
NO | 設備名称 | 加工精度 |
---|---|---|
1 | ジグ中ぐり盤/ジグボーラー | ±0.003~±0.005mm |
2 | ワイヤーカット/ワイヤ放電加工 | 0.005mm |
3 | 小型マシニングセンタ | ±0.002~0.006mm未満 |
4 | NC旋盤 | 0.01mm |
5 | レーザタレパン複合機 | ±0.07mm |
6 | タレパン | ±0.1mm |
今回は、板金加工におけるレーザタレパン複合機について解説しました。
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