板金加工:アーク溶接について
本記事では、板金加工における「アーク溶接」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
当コラムでは、絞り加工のトラブル事例を紹介します。今回は割れ不良、絞りキズ、底部変形をピックアップしています。
ショックライン、しわ不良については以下のコラムで解説していますので、是非こちらもご確認ください。
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絞り加工を行うと必ず問題となる現象が割れ不良です。割れ不良は、金型構造や作り込みの良し悪しで発生する現象です。発生現象と発生要因について解説していきます。
割れ不良の現象は、大きく3つの現象が有ります。
1つ目の現象は、成形した底部の割れになります。この現象は割れ不良の中でも典型的な現象で割れの発生部位は、絞り加工の底部のR部と側壁部の境界で発生する事が多い現象です。
この部位で発生する割れは、絞り加工の初めから最後までこの部分に最も大きな引張り応力が作用し続けるため、降伏点を超えさらに引張り応力が加わり続けると割れとなります。
下図の絞りにおける応力の様子に中でR部に係る応力を下げる事が割れ不良の対策となります。割れ不良の主要因としては下記の事項が考えられ、これに対する対策を実施する事になります。
①絞り率が小さい。材料、板厚、対ブランク直径、絞り工程等に応じた絞り率に設計する。
②クッション圧が高い
③クッション圧が不適当(バネ定数、たわみ量等)
④ダイ、およびしわ押えの面が粗い
⑤ダイおよびパンチのコーナRが小さい
⑥絞り速度が速い
⑦しわ押えのクッションの種類が不適当
などが有りますが、最近では切削加工機の加工精度が飛躍的に良くなり、切削加工後に仕上げ(ラップ加工等)が行われず割れ不良の発生につながる事も有ります。
2つ目の現象は、フランジ部に近い部位で割れる現象です。この現象は先の底部で割れる現象の逆でダイスの肩部R形状が滑らかでなく角張った部分が残っているなどで、材料の滑り込みが悪くなる事で引張り応力が高くなり割れが発生する物です。また、しわ押え力が大きすぎることも影響し割れの発生となります。対策としてはダイスの肩部R形状の仕上げ加工を入れ滑らかにする事やR寸法を大きくするなどが有ります。また、しわ押え力の見直し、ブランク展開寸法の見直しによりしわ押え範囲を少なくする事で割れ防止を図ることができます。
絞り加工の底部、フランジ部の近傍での割れで共通の原因にしわ押え力の設定が有ります。金型製作時には問題なく加工が出来ても、量産加工時に材料ロットが変わる事で割れが発生する場合や、金型のクッションパッドの表面の焼き付きにより材料滑り込み状態が悪くなり割れが発生するケースが有ります。入手した材料の板厚が稀に厚いものが入る事が有り、このためしわ押え力が大きくなる、またクリアランスが変わる事で割れが発生する事も有り、金型の定期的なメンテナンスや、材料の管理が重要となります。
絞り加工により内径寸法精度を管理する場合などは、材料のエキストラ*1で発注を行う事も有ります。
*1:絞り加工性を高める為、板厚精度をJIS公差より更に厳しい公差で購入する、または、絞り性の高い材料に成分調整を行った材料の手配を行う等を言います。
絞り加工後に発生する割れ(置き割れ)は、絞り加工後、数日間立った後に発生する現象で、シーズンクラック等と呼ばれます。この現象は材料に起因する所が大きく、黄銅や、アルミニウム合金、ステンレス材料で、絞り率の厳しい条件で加工した場合などに発生します。対策としては、絞り回数を増やし絞り条件を緩くする等が有りますが、加工後に焼鈍を行う事が最も安全な方策なります。
絞り加工における材料起因の割れ不良では、「ヘゲ」と呼ばれる材料中の不純物による割れ現象が有ります。この現象では、完全に割れて口開き状態となる場合と表面のみが引き裂かれるように割れる現象が有ります。この現象では材料中のヘゲが有る区間で発生し、その後に無くなる場合が多く、コイル材であれば約10~20mの区間でのみ発生するケースが大半です。
ヘゲは材料自体の不具合ですので、予め見つける事ができれば返却する事が可能ですが大半は加工中に発見されるため選別・廃棄となります。
ヘゲ自体の発生原因は、高炉から材料を連続鋳造で引き出す際のスベリ材(主成分アルミナ)が鋼中に入り込み、圧延時に引き延ばされる事で発生します。高炉メーカーでも厳密な検査体制や改善を継続されていますが完全に無くすことは難しいのが実情の様です。
絞り加工で、発生しやすい不良に傷不良が有ります。この不良の原因は、絞りダイスのR部から壁面に傷や焼き付きによるものです。
金型製作時に、パンチ、ダイスの表面は研磨などにより、プレス成形をしやすくしています。また、プレス加工油も、成形性を考慮し油膜強度高い加工油を選定する事で加工時の油膜切れを防止し成形性の高い加工条件を設定します。
しかし、加工中に粉塵などの侵入や、加工油の塗布不足等により、油膜切れが発生しパンチダイスに傷が付き始めると下図の様な縦キズが付き始めます。この現象をそのまま放置すると傷は深くえぐられる様な状態となります。
肌荒れは、絞り加工時の材料が上手く滑り込まない様な状況で材料が引き延ばされ、加工表面が肌荒れする物です。この場合には絞り径はマイナスになっている事が多い現象です。この様な現象は絞りダイスのRが小さい、ダイスの面が粗い、加工速度が速いなどがあげられます。この縦キズや肌荒れの対策には、絞りダイスのR形状を滑らかに仕上げる事と、パンチ・ダイスに表面処理を施す事で対策とする事ができます。
絞り加工時における底部の変形には、膨らむ場合と凹む場合が有ります。この変形は、比較的材料板厚が薄く、絞り径が大きいもので発生する事が多い現象です。膨らむ現象では絞り加工時の加工油が製品とパンチの間に多く入る事でプレス加工時の圧縮により製品が凸形状に膨らみます。また、凹む現象は、プレス加工後にパンチが製品から抜ける時に発生しますこの凹みの現象は製品とパンチの間が真空状態となる事で発生します。
この現象を防止する為には、パンチダイスに、空気抜きの穴を設ける方法が有ります。但し、この穴のサイズも大きすぎれば部分的な変形となりますので注意が必要となります。
今回は、絞り加工のトラブル事例解説しました。
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